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ちか と つる

「おおだま」と「しずくいし」による、『戦国BASARA』のチカツルについてあれこれ語ったり、二次創作したりするブログです。NLオンリー。腐はどこを探してもありません。

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前回投稿が去年の11月とか…!!(((( ;゚Д゚)))
日記として使ってたらもちょっと頻繁に更新できるんだろうけど、基本チカツルに関することしか置いてないからなー。
申し訳ないです(><;)
前回投稿した、社会人アニキと甥っ子家康(5歳)と家康が通う保育園の保育士鶴ちゃんのお話の続編です。

≪ ひだまりたんぽぽ 第2話 ≫ しずくいし
 午後3時40分。通常保育時間を過ぎ、保護者のお迎えを待つ者と延長保育で引き続き遊びに没頭する者が入り乱れた園内は、一日のうちで最高潮の賑やかさを誇っていた。
 本来であれば後者に属する家康は、いつもならたんぽぽ組の教室でこの時間を迎える。しかしこの日は前者が集まるホールで、友達との遊びに興じていた。
 今日はプロ野球の試合を見に行く為に、元親が午後から休みを取っているのだ。
 数日前に商店街の福引で当てた観戦チケット。野球のことはあまりよく知らない家康だったが、初めての野球観戦は楽しみだった。どんなところだろうとワクワクする。
 それに、普段は閉園間際に迎えに来る元親が、まだ明るいうちに来ることも嬉しかった。
 ――――ただ、いつもと生活リズムが違う為、若干友達と遊び足りない感もあったようだ。玄関には周りから群を抜いて高い銀髪が既に姿を見せていたが、担任の鶴姫と話し込んでいるのをこれ幸いと、先ほど始めたごっこ遊びを続行していた。
「いくぞみつなり、ホンダムビーーーーム!」
「ひでよしさま、わたしにビームをはねかえすきょかを!」
 仲の良い三成と戦いを演じるのは、それぞれ違う番組のキャラクター。片やアニメ、片や特撮と次元すら違う異種格闘技戦だが、本人達にとっては然したる問題ではないらしい。彼らの世界は当たり前のように成立している。
「……ひかりいろさん………」
 そこへ、同じたんぽぽ組のお市がビームを体で分断する形で現れた。
 引っ込み思案でとても大人しい女の子だが、周囲の状況にあまり頓着しない性質でもある。人の好き嫌いも激しいが、面倒見の良い家康には何かと懐いていた。
「ん?なんだ、おいちどの?」
「ちょっと、みみをかして……?」
「ないしょばなしか?」
 ちょいちょいと手招きをするので、家康はビームの構えを解いてお市に向き直った。
「いえやすぅぅ、きさまたたかいをとちゅうでほーきするつもりか……!!」
「すまんみつなり、ちょっとまっててくれ!」
 吼える三成を笑顔で制し、耳に手を当てて聞く体勢を整える。家康よりも少し背の高いお市が軽く屈んで、二言三言囁いた。

「………そうなのか?」

 お市の発言を受け、ぱちくりと目を瞬かせた家康はそっと玄関を振り返った。
 そこには楽しげに笑う元親の姿。
 いつもと変わらないような気もするし、言われてみればどこか違うような気もする。でもよくわからない。
 ね?と同意を求めるお市に、そうなのかーともう一度ぼんやりした返事をして。
 家康は不思議そうに小首を傾げた。



ひだまりたんぽぽ 第2話



 狭い浴室内に、機嫌の良い鼻歌が響く。
 短くツンツンと立った黒髪にシャンプーをボトルから直接落とし、元親が無造作にわしゃわしゃと掻き混ぜ始めると、それまで大人しく洗われていた家康が思いついたように突然上を向いた。
「うおっ」
「なぁ、もとちか!」
「目ぇ入るぞ、前向いとけ」
「うん。あのな、ほーむらんすごかったなー!」
「おう、やっぱ三年連続ホームラン王は違ぇな!軽く振ってんのにぐんぐん伸びてくもんなー。それにあんなキレイな放物線のホームラン、初めて見たぜ」
「どーぶつせん?」
「ほうぶつせん、な。こう――――」
 鏡の前に置かれた黄色いアヒルの玩具を軽く放り、弧を描いて湯船にぽちゃん、と落ちる様を再現してみせる。
「こういう動きのことを、放物線ってんだ」
「ふうん」
 しかし納得したのか興味を失くしたのか、家康はそれ以上反応を見せずにアヒルへと手を伸ばした。子供の関心の移り変わりは早い。
「よっし流すぞー。家康準備!」
「おー!」
 威勢の良い掛け声と共にきつく目を瞑る家康の頭目掛けて、シャワーのお湯を捻る。顔が濡れることを家康が怖がらないのは、繊細な洗髪技術など持ち合わせていない元親にとってもありがたいことだった。
 泡がなくなるまで濯ぎ終わると、一先ず湯船に浸からせて自分の洗髪に移る。のぼせさせてはいけないので手早く洗って流していると、横から無邪気な声が掛かった。
「もとちかー」
「ン?」

「もとちかって、つるちゃんせんせいのことすきなのか?」

「な、ば、ぶはっ!?」
 予想だにしない質問に、シャワーのお湯を吸い込んで盛大に咽た。鎮めているつもりなのか、げっほごっほと咳き込む元親の頭を家康が撫でる。
「なななんでえ、急に!」
「おいちどのがいってた。わたげさんはつるちゃんせんせいのことがすきなのね、って」
 わたげさんとは、ほわほわと逆立った元親の髪をたんぽぽの綿毛に重ね合わせて、お市が言い表したものである。
 苦しさから目尻に溜まっていた涙を乱暴に拭い、元親はしみじみと吐き出した。
「はー……やっぱ女の子ってのはマセてんなー」
「じゃ、せーかい?」
「まあバレちまっちゃしょうがねえな。正解だ」
「へええ!」
 おいちどのすごいなーと感心しきりな家康をよそに、ぶるりと震えの来た身体にシャワーを一浴び。急ぎ湯船に入ると元親の体積で湯が溢れ返り、危うく一緒に流れ落ちるところだったアヒルをすんでのところで受け止めた。ナイスキャッチ、と自画自賛も忘れない。

 浴室内は湯気で白く煙っている。
 天井から滴り落ちた水滴が湯船で跳ねて、高く澄んだ音を立てた。

「なぁ、家康」
「なんだ?」
「お前を男と見込んで、ちっと頼みがあるんだけどよ」
「にんむか!?」
「………おう、極秘任務よ」
 途端に仔犬のような瞳がキラキラと輝き出す。
 その明らかにテンションの上がった様子に若干不安な気持ちを抱きながら、元親は小さなエージェントへ極秘任務を伝えたのだった。





 翌日、仕事を終えた元親が保育園へ着いたのは、日没を前にして濃さを増した青い空に薄っすら赤が混ざり出した頃だった。
 門を抜けると、薄暮れの中を跳ねるようにやって来る親子連れと擦れ違う。軽く会釈をして、微笑ましさに零れた笑顔のまま玄関を潜った。
「もとちか!」
 探すまでもなく、いち早く元親の姿を見つけた家康が走ってくる。既に帽子と鞄は装備済みだ。どうやら最後のお迎えだったらしく、がらんとしたホールに他の園児は見当たらなかった。
「おう、待たせたな」
「つるちゃんせんせい、さよなら!」
「はい、さようならです☆」
 元気の良い挨拶に、鶴姫の優しい声が返る。そのやり取りを後ろから眺めていると、家康の目線に合わせて屈められていた彼女の背がすっと伸び、視線がこちらを向いた。
「お疲れ様です」
「あ、いや、センセこそ」
 目と目が合って、琥珀色の瞳が柔らかな曲線を描く。
 彼女が笑う、それだけで蕩けるような甘い疼きが胸を満たした。

 ――――ああ、やっぱり。やっぱりめちゃくちゃ可愛……

「あっ!」
 湧き上がる感情を元親が噛み締めていると、突然家康が叫んだ。
 何事かと下を見ると、そわそわ落ち着かない様子で何かを反芻している。トイレだろうか。行って来いと促しかけるも、その手を掻い潜って家康が一歩前に出た。
 そして。



「つるちゃんせんせい、かれしいるの?ってもとちかがきいてくれだって!」



 長い長い、それは長い沈黙が落ちた。



 確かに聞いてくれと頼んだ。
 出所を口止めしなかったのも事実だ。
 まさか言わないだろうという油断が招いた事態、まだ幼い家康にそこまでの機転を期待してはいけなかった。だろう運転よりかもしれない運転、ヒヤリ・ハット。
 ………話が逸れた。
 予想外の展開に内心頭を抱えたが――――こうなったら腹を括るしかない。
 元親は左拳をぐっと握り締め、目の前で固まっている鶴姫の瞳を真っ直ぐに見据えた。
「そういうわけで、俺マジなんスけど」
「えっ!?」
「彼氏、いるんスか?」
「あ、いえ……いません」
 ここで小さくガッツポーズ。
「じゃ、連絡先教えてくんねえかな?」
「で、でも、父兄の方とそういうのは……」
「俺独身だぜ?」
「そういうことではなく!」
「禁止されてんのかい?」
「え…と、特にそういう決まりがあるわけではないです、けど……」
「なら問題ねえよな♪」
 たじろぐ鶴姫に満面の笑みで携帯を差し出すと、彼女はぱっと俯いた。元親の位置からは焦げ茶のつむじしか見えないが、エプロンの裾をもじもじといじる仕種で照れているのだと分かる。
 思わず口元が緩むが、あまり強引に行き過ぎて心象を悪くしてもいけない。
「アンタが迷惑だってんなら、無理強いはしねえよ。どうする?」
 やや前のめりだった姿勢を正して伺いを立てると、鶴姫の顔が少し上がった。上目遣いに様子を伺う様は小動物のようで、元親の庇護欲をどうしようもなく刺激する。上昇する心拍数。
 そんな元親の見つめる先で、エプロンの裾から鶴姫の手がそっと離れた。ゆっくりと上へ移動したそれは、中にあるものを確かめるようにポケットごと握り締める。
「………あ、の」
 若干の逡巡の後。
 顔を上げた鶴姫の手には、薄紅色に染まった頬と同じ色の可愛らしい携帯が握られていた。





 保育園から車までの短い距離を、小さな手を引いて歩く。
「なあもとちか、わしにんむできたか?」
「おう、バッチリよ。助かったぜ、ありがとな家康」
 そう言って黒い頭を撫でてやると、嬉しさに笑み崩れた顔で家康がぴょんこぴょんこと飛び跳ねた。素直な反応に目を細める。
 当初の予定とは違ったが、終わってみればこれが最善だったと元親は思っている。変に策を廻らせるより、正面突破の方がずっと自分らしい。
 鶴姫の見送りはなかった。
 アドレス交換した後も彼女は大変にたどたどしい様子だったので、今も一人照れまくっているのかもしれない。
 そう思うと顔がニヤけた。腹の辺りがくすぐったくて困る。
「家康は好きな子とかいねえの?」
「うーん……よくわからん」
「ホレ、あの子は?お前のこと光色さんって言う……」
「おいちどの?」
「そうそう」
「おいちどのは、ながまさどのとけっこんするっていってたぞ」
「うはー、早ぇなオイ」
 他愛のない会話をしながら、家康を助手席に乗せてやる。車高の高いこの車に、一人で乗れるようになるのはいつのことだろうか。
 ドアを閉め、振り返ったところで保育園のホールの明かりが落ちるのが見えた。程なくして奥の電気が点く。

 電気が消えて点いた、ただそれだけのこと。
 しかしそこに彼女がいることを実感して、無性に嬉しくなる。

 帰ったらなんてメールをしよう――――そんなことを考えながら、元親は運転席に乗り込んだ。

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