ちか と つる
「おおだま」と「しずくいし」による、『戦国BASARA』のチカツルについてあれこれ語ったり、二次創作したりするブログです。NLオンリー。腐はどこを探してもありません。
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ピクシブにて、シリーズ「夜」と題して、元親と鶴姫の、告白→夜這い→求婚→婚儀→初夜までを書きました。そして、「初夜編」は思いっきり18禁内容になったため、アクセスを制限しています。
しかし、きっと18歳以下の同志もおられて、そんで今までのシリーズを読んでくださっていた方もおられると思うと、半端に中断させてしまうのが申し訳なくなってきました。
つきましては、18禁場面を略した全年齢版を、以下に掲載いたします。どこまでがまずいのか、よくわからんのだが(笑)。
濃淡のある暗がりだった。部屋の片隅には、行灯の柔らかい光がある。
ふすまの隙間からは、隣の間の脂燭の光が細い線を引いている。
<< 朝になる前に ※初夜編※ >>全年齢版
元親は、かぶさっていた小袖を蹴たぐってめくり、夜具の上にそっと鶴姫を横たえた。
「待ってな」
優しく優しく囁いて立ち上がり、凄まじい早さで袴の紐を解き、脱ぎ捨てて放った。
「びっくりしました」
「ん?」
小袖一枚になって鶴姫の隣に寝転がり、肘を三角に立てて鶴姫を覗きこむと、鶴姫も元親を見上げて何か言っている。
「あんな格好もするんですね」
「ああ、直垂か」
元親は鶴姫の髪を撫で、毛先をいじりながら、さりげなく鎖骨あたりへ手を置いた。
「黒も似合いますね、かっこよかったです」
「ふふん、だろお? グッときたか?」
「きました」
くすくすと笑う娘の鼻先に口唇を落とす。
「まあ、ありゃよっく見りゃ茄子紺でよう、紫の仲間なんだけどな」
「そうなんですか!」
「じじいどもがあんまり黒くろ言いやがるから、ムカついて意趣返し」
鈴の音のような笑いをこぼす口元に、軽く口唇を重ねた。ちゅ、ちゅ、と音を立ててついばんでいると、鶴姫が、はあっと甘い吐息を漏らす。
それにほくそ笑む思いで、元親は鶴姫におおいかぶさり、顔の両側に手をついた。
「ま、お前が似合うってなら、黒の陣羽織でも仕立てさせるか。眼帯も誂えて」
「んっ」
何か返そうとして開いた口に押し入った。
閨で日常の話を続けるのは野暮だと思う。正直、己の装束の色よりも、鶴姫の隠された肌の色を確かめるほうが重大事だ。しかし、元親は、ひたすら鶴姫の緊張を解きたかった。絶対に間違いなく、この夜の最後にはひどい苦痛を与え、我慢を強いることになる。できれば―――――それをなるべく小さくしたい。
「は、はふ……んんっ」
可愛らしい息が元親の耳をくすぐる。鶴姫の歯茎を舐め回し、小さな舌をねっとりと貪りながら、元親は鶴姫の耳をいじった。
「んんッ」
ぴくりと首が竦む。逃げていっても構わずに、耳の縁をなぞり、耳たぶをくにくにと揉んだ。
それにしても、絡まりあった舌が心地よい。鶴姫の声が艶めかしい。擦りたて、しごき、唾液を絞って、息を荒げながら食みあう。
「んん」
耳から指を離して、夜着の上から手のひらで乳房をおおってみた。さすがにからだが震えたが、大きな反発はない。
「はふ……」
ゆっくりゆっくり、舌を抜きとると、ぼんやりと見上げてきた。口を半ば開け、とろけた眸をして、頬を染めて。口唇が震えた。
「だめぇ……」
「何が」
くすりと笑う。駄目もイヤも通す気はない。
「あんまり、かっこいいと」
何の話かわからず、一瞬、傾げた元親の首に鶴姫の腕が巻きついた。
「恥ずかしくって、近寄れません……」
そして、ぎゅうとしがみつく。さっきの陣羽織のことだとやっとわかって、元親の顔が緩む。
―――――可愛い。こいつ可愛い。たまんねえ。
にやつく顔を鶴姫の首に埋めて隠して、ぎゅうと抱き締めたところで、鶴姫が囁いた。
「くっつきたいの……」
「……ッ」
元親の背筋に、ぞくりと痺れが走った。
―――――こいつ……こいつ、どうしてくれよう。
我ながら健気な誓いが、頭からふっとんでいく音がする。
―――――泣かしてやる。とろっとろに蕩かして、よがり泣きさせてやる……!
とはいえ、元親に処女を抱いた経験はない。とにかく痛がる泣き喚くの地獄絵図だと聞いて、意識的に避けてきたのだ。
“初物喰い”を自慢する男たちの気が知れなかった。お互い愉しく睦み合えてナンボだろうに。よがっての涙なら本望だが、苦痛で泣かれたりしたら、間違いなくその時点で萎える。元親にとってまぐわいは、女から慈しみを得、こちらから愛しみを与えるものだった。
となれば、いつだったか、女郎屋の主人と呑んだときにそんな話になって、言われた言葉が頼りである。
『旦那、生娘だって、丁寧にほぐして濡らして、時間かけて緩めてやりゃあ気をやりますぜ』
『そんなもんかねえ』
『もともと空いてる隙間を、こう、ぐっと広げてやるだけですから』
『簡単に言いやがる。姐さん、どうだい?』
しかし、苦笑した元親が、酌をする女郎に水を向けると、
『けど、旦那みたいにご立派じゃあねえ、あたしらでもフウフウ言ってますよアハハ』
台無しなことを言って大笑いされた気がする。
首にかじりついた鶴姫の肩を抱えて体を浮かさせておき、空いた手のひらで後ろ頭を撫で、うなじをくすぐって、華奢な肩から背中をたどる。そのたびに、耳元で漏れる鶴姫の吐息が、実に扇情的だ。
「脱がすぞ」
しかも、そう宣言すれば、こくりと素直に頷くし。
有り難く、夜着の帯の端を引く。しゅ、しゅしゅ、と衣擦れをさせながら、たぐってたぐって、引き抜いて投げ捨てる。襟の合わせ目を開いて、素肌に手のひらを置いた。
「ん……」
初めて触れた、吸いつくような肌の感触に元親は胸を突かれた。しかも鶴姫は身じろぎするが、逃げない。いやがらない。委ねきられることが、こんなに己を興奮させるとは思わなかった。
手探りで両の乳房を順に撫で、腹を撫で、脇を撫で、背筋をたどる。
「鶴の字、手、離せ」
「やだぁ」
―――――だから、その声やめろって!
離されまいと擦り寄ってくる感触が、舌たらずの甘え声が、元親の体の中心を直撃する。思ってしまうではないか、たったこれだけでこうなら、突きこんだときどんなふうに、と。
「ん、脱がしてえから、これ」
「あっ」
赤い耳孔をぺろりと舐めると腕が緩んだ。その隙に口唇を舐め上げ、舌だけを突き出して小さな歯をつつく。
「ん、んふ」
「ははっ」
「もう、ん、んん……」
現れた舌の先をくにくにと合わせた。気持ちがいい。
鶴姫は口唇を合わせたいのだろう、追いかけてくるのから逃げ回り、舌だけを絡ませる。
「意地悪、あっ」
すっかりお留守になった腕から夜着の袖を抜いた。自慢になるが、脱ぐのと脱がせるのは滅法早いのが、元親という男だ。
「あっ、だめです、見ちゃだめ」
「いやだ、見る」
乳房を隠そうとする腕を掴み、手首を顔の両側に押さえた。
「だって」
「見るったら見る」
小さい細い薄いとこぼしていることは、それこそ薄々知っている。
「全部俺んだ」
※ 中略 ※
出し切って注ぎ尽くしてやっと終わったとき、元親は後ろに倒れかけて、何とか後ろ手をついた。腰が抜けたようで力が入らない。
「っあ――、凄かったァ……」
天井を仰いで大きく息をつき、拳でぐいと顔を拭った。
「ふう」
もう一度息を吸って吐いて、顔をしかめながら背を起こす。
「おい、大丈夫か?」
胸板に俯せている鶴姫の頭のてっぺんに口づけながら、その背をとんとんと叩いたが、反応がない。
「げっ」
膝を傾けたところ、腕にころりと転がった新妻は、完全に失神していた。
「やべ……お、おいおい、鶴の字ぃ?」
呼吸と脈を確かめてひと安心する。実際、腹上死なる言葉がある以上、何が起こるかわからないではないか。まあ、あれは男の身の上に起こる椿事なのだが。
「最初の遣り繰りにしちゃあ、ちっとばかし過ぎたかねえ」
ぼやきながら廉紙を掴み取り、手早く後始末にかかる。いろいろ渇いてしまうと面倒だ。
「ざっとでいいか」
びしょ濡れのあたりは蹴飛ばし、元親は鶴姫を抱き寄せて小袖をひきかぶった。
「なあ起きろよう…寂しいだろー?」
いろいろ囁いて後戯と洒落こみたいところだが、つついても撫で回しても、鶴姫の目蓋は上がらない。
「ま、いいか」
腕の中の鶴姫の前髪を指で散らして、額に額をつける。しげしげと眺めた。目を閉じると、やはり幼くいとけなく見える。それもまた、元親には好ましい。
「好きだぞ、惚れてんぞ」
言い渡すつもりで呟いたが、急に気恥ずかしさに襲われて、元親は目を閉じた。
腕の中で、抱えた鳥が羽ばたこうとするので笑った。ぐっと翼に力が入り、ばたばたくるくる動く手応えと感触が好きだ。
そのまま飛ばせたときの反動と、胸がすくような広い淋しさもいい。しっかり抱え続けた末に諦めたのか、留まってもらえる喜びもいい。
「んだよ、いいじゃねえか、居ろよ」
今は、飛ばせたくない気がする。呟いてぎゅうとかき抱くと、肩をばしばしと叩かれる。
―――――叩かれる?
「海賊さんってばっ」
「ん?」
声がやっと意識に入り、言葉になった。障子越しの朝の光が目に染みる。視界の下の方で、なにか焦げ茶色のものが動いていると思ったら、鶴姫の頭だ。
「おはようございます、もお、寝坊すけさんですね!」
「おお、おはようさん」
起き抜けに、覗きこんだ腕の中に鶴姫が居るという……なんというか、至福である。にやついていると、鼻をつままれた。
「んがっ」
「起きるので、離してくださいっ」
「お前、つれねえなあ」
まあ、いい。気づいてないようなので、楽しませてもらうことにする。名残惜しく腕を緩めると、鶴姫が呻きながら身を起こし―――――起こしかけて叫んだ。
「うきゃ―――!?」
「あー、眼福。おい隠すな」
かぶっていた小袖を半分がた取られても、寝転がった元親は、頬杖をついてにやついている。
「ぎゃああっ、海賊さんも隠してください!」
「ギャアはねえだろ」
「そんなもの見せないで――!」
「そんなものたあ何だ、そんなものたあ!」
ひどい言われようだが、元親が晒しているのは上半身と膝から下で、“野放し”にしたわけではない。まあさすがにそれは……男の朝の事情もあるから、うぶな鶴姫には酷だろうと、上掛けの端だけは確保して隠しているのだ。褒めて欲しいくらいである。
「もおっ、私の寝間着どこですかっ」
「ええ?」
元親と分け合った上掛け半分にくるまり、白い磯巾着みたいになった鶴姫が、きゃんきゃん吠えている。首まで真っ赤になっていて、怒っているのに何か可笑しい。
「あれじゃね?」
首を巡らせ、背中側、ふすまの手前にあるのを指差す。
「もおっ、取ってくださいっ」
「へいへい」
「ぎゃああっ、駄目っ、動いちゃ駄目です!!」
「はあ?」
寝返りをうちかけると、鶴姫に飛び付かれた。
「おっ、お尻見せないでくださいよ!」
「俺の尻が、なんか迷惑かけたか?」
「なんでそこまで堂々とできるのか、理解不能です!」
ひどい言われようだが、自分でするならドウゾ、だ。
鶴姫は、自分自身からも元親からも上掛けの小袖を取りたくないから、行動半径が限られる。元親のからだの上に、身を乗り出して、手を伸ばした。
―――――おう。これはなかなか。
素知らぬ顔で間近の美を見上げ、堪能する。
細い裸の腕が伸びて、上掛けから鶴姫の首筋、鎖骨あたりが垣間見える。肌が白いから、散らばる鬱血痕の朱が痛々しいくらい際立っている。もちろん、昨夜の自分の軌跡だ。新地の雪原を踏み荒らしたような快さが、腹に、いや下腹にぐっとくる。
「うんしょ」
届きかねているらしく、さらに乗り出す。上掛けが突っ張って、脇が見えた。乳房も半分がた覗けている。
―――――おお、おう、絶景。
元親は頑張って顔を引き締めた。にやつくと、なぜだかすぐバレるのだ。
―――――もうちょい落ちねえかな。もう、ちょい。
「きゃあ!」
思った瞬間に、無意識に手が出た。本当に無意識で、下から乳房を受けてしまったのだ。上掛け越しとはいえ、ふに、というたとえようもなく柔らかな感触に、鼻の下が伸びた。
「てっ、イテテ」
飛び上がった鶴姫は、飛び上がっても不届きな手のひらがつきまとうので、ばしばしと叩きだす。必死かつ真剣なので無言だ。
「……っ」
埒の開かない攻防に、鶴姫が勝負に出た。
「えーい、お覚悟っ」
「うわ」
どーんと元親の腹の上に身を投げ出して、その勢いで夜着の塊を引ったくる。まさに捨て身だ。しかも戻りしなに、男の鳩尾に手を突いた。
「ぐえ」
緩み切っていた腹への一撃に元親が悶絶している間に、鶴姫は悠々と姿勢を復する。
「こっち見ちゃ駄目ですよ~」
そして、背を向けて夜着を肩に羽織った。
「見たらどうなんの?」
「泣きます☆」
「ぐっ……このヒキョーモンが」
夜着の下から上掛けがぱさりと落ちるだけで、十分に刺激的なのだ。何も見えるわけでもないが、その下の何もまとわない肌を思い描いてしまうから。
しぶしぶ目を閉じて、衣擦れに聞き入る。しゅしゅと帯の走る音。きちきちと裾を合わせる音。
「あ、ちゃんと瞑ってる」
ふっと影が差し、間近で甘い声がする。
「見るなつったろうがよ」
「ふふ、ご褒美です☆」
ちゅ、と頬に口唇を感じ、元親は笑いながら目を開けた。
「へえへえ、光栄だね」
「海賊さんてば、にやけてますよ」
「るせ」
見上げると、鶴姫はきちんと正座している。
「座ってください」
「何だよ」
「いいから」
腕を引かれて、よくわからないながら身を起こした。
「ちっと待ってろ」
用済みになった上掛けの小袖を腰にざっと巻いて結ぶ。上半身は諸肌脱ぎのまま、胡坐をかいた。身仕度は早い。
「で、どうした?」
改めて尋ねかけると、さっと三つ指を突くではないか。
「おいおい」
「昨日、ちゃんとご挨拶、しないままでしたから」
「いいよ、挨拶なんか」
一番美味しいところをばっちりいただけて、元親に何の不満のあろうか。しかし、鶴姫はきりりと眉を引き締めて、あくまで本気である。
「駄目です、越し入れの作法だと教わりました。バシッと挨拶しておかないと」
「ふゥん」
「鶴と申します」
きちんと焦げ茶色の頭が下がって、ぴたりと止まった。
「不束者ですが、幾久しく、宜しくお願いいたします」
そう来られたら、正道に受けざるを得ない。元親も胡坐の膝に拳を置き、声を張る。
「されば、つかまつる。長曾我部元親と申す」
滅多に見せることのない、武士らしい挙措だ。元親は幼少より武家の作法を叩きこまれた上で、性根によってそれを外している。
「いかにも承った。不調法者なれど、末長くよろしく頼む」
肘を張り、きちっと頭を下げて上げると、鶴姫もすうと背を伸ばした。真顔だったのが、むずむずと口元がにやけている。
「……んだよ、言わせといて笑うなよ」
「だって、嬉しいんですもん、うふっ」
笑み崩れるのを止めようとしてか、両の頬に手を当てた。
「私、これで、ちゃあんと海賊さんのお嫁さんですよね」
「ああ」
何やら“ちゃんと”の線引きがどうも己と違うようだが、帳尻が合ったならよかった。
「今日の“御披露目の儀”で面倒も終わりだ。頑張ったな」
「あっ、そうでした!」
小さな頭に手のひらを載せてねぎらったら、跳ねとばして迫ってくる。
「ど、どうしましょ、皆さんお待ちなのでは!?」
「ないな」
誰も呼びに来なかったし、第一屋敷は静まりかえっている。
「明け方までドンチャンやってやがった。やっとこ昼すぎにゃお引き取り願って……夕刻からだろ。のんびりしとけ」
言われてホッと安心したようすが可愛らしい。元親は、胡坐をかいた自分の膝をトントンと叩いて指差し、顎をしゃくって見せた。
ぽかんと首を傾げた鶴姫が、あっと気づいて笑いだした。頬はほんのりと赤い。
「うふっ、ドーン☆とお邪魔します!」
「おうよ」
よいしょよいしょと膝に上がってくるのが待ちきれず、背と膝裏をすくって抱え乗せた。大きく抱きすくめると、くすくす笑って背に手を回してくる。胸板に頬を擦りつけてじっとしているさまは、懐いた小鳥のようだ。途端にむくむくと、からかいたい、突つきたいという子どもじみた衝動が湧いてくる。
「いま、好きって思ったろ?」
「ふえ?」
「思ったら言っていいんだぜ?」
「まあ、うぬぼれ屋さん!」
真っ赤になって、いちいち反発してくるようすも可愛らしいと思ってしまうのだ。病膏肓に至るという奴だ、つける薬がない。
「ところでなあ」
焦げ茶色の頭のつむじあたりに顎を載せ、元親は呟いた。
「はい?」
「さっきの挨拶は、『床入りの儀』の前にするんだろ?」
顔が上がる動きに、顎をどかし、目を合わせる。ついでに口唇も合わせた。
「んっ」
花のような口元に触れて、すぐ離れると、目がぱちぱちと瞬いている。
「違うのか?」
「そ、そうで」
皆まで言わせず、開いた口を舌でふさいだ。
「んっ、んっ」
抗議か、ドコドコと胸板が叩かれているが、ぎゅうと抱きすくめられて振りかざせない小さな拳には、何程の力もない。口中を舐め回して、舌を絡めとってしまえば、元親の勝ちだ。じきに鶴姫は、覚えたばかりの口づけの妙味に蕩心し、夢中になる。舌の真裏を丁寧にしごき、粘膜と粘膜をいやらしく擦り合わせて、くちゅくちゅと唾液を鳴らした。
「はあ……ッ」
ちゅく……と唾液の糸を引いて口唇を離すと、甘い息を吐いて、ぼんやりと元親を見上げる。
「音、やです」
「うん?」
舌足らずに何か言い出すので耳を近づけた。
「恥ずかしい、の……」
「そうか、ハハッ」
それがいいんだ、とは言わずに、元親は笑いながら鶴姫の胸元に顔を埋める。頭を、細い腕が抱えてくれる。髪の間を通る指が心地好い。肩を擦り、背を撫で下ろし―――――鶴姫の帯を引いた。
「えっ」
そして、次の瞬間には、手際よく押し倒された鶴姫が、元親の腕の間で呆気に取られている。
「だから、お床入り」
「ええっ」
「挨拶したもんなあ、段取りは守らねえと」
「ちょ、ちょっと」
「今度は俺に、触ってみるか?」
にやけながら言うと、鶴姫の顔がさっと青ざめたから、さぞや悪そうな笑みになったのだろう。
「大丈夫だ、何事も慣れと鍛練だ。時間は十分あッからよ」
元親の耳には、隣室で朝餉の膳を運びこむ、密やかな気配が聞こえていた。大急ぎ、大慌てで退出してゆくその足音も。せっかくの用意を無駄にして悪いなと、胸裡で手を合わせてから、元親は鶴姫の肌に没入していった。
「うおお……似合う!」
すっかり支度を整えて、台に腰をかけている鶴姫の前で、元親は唸った。
“御披露目の儀”は、家臣郎党一同に対して行われる。花嫁は前夜の床入りを経て、白無垢から色を改め、掛代の上から裾を引く華やかな色打掛をまとうのが慣例だ。
「いいなあ、こっちもジジイどもに見せびらかしてやりたかったぜ」
鶴姫の打掛は桜色の正絹、そこに繊細な刺繍が濃い色の桃花を描きだしている。金糸を交えた美麗な刺繍が小柄な鶴姫によく似合い、加えて昨夜と同じ桃花の髪飾りがあでやかに揺れていた。
「ん? そういやァ、昨日の冠の飾りも桃花だったな。桃尽くしか。そっちの社の縁起かつぎか何かかい?」
げしっ。
首を傾げた元親のすねを、花嫁が蹴とばした。
「いでっ、うわ、信じられねえ、花嫁衣装でダンナに蹴り入れやがったコイツ!」
「信じられないのはコッチです! もお!」
頬を染め、ぷいと顔を反らす鶴姫は、そんな拗ねた仕草であっても元親には愛らしく映る。すねを押さえていた男はすぐに笑いだし、なだめにかかった。
「何か知らんが機嫌直せよ、せっかく綺麗なんだからよ」
「……」
ぷりっと膨れている鶴姫は、出会った頃のように幼く見える。怒りは治まらないようだが、とにかく元親が手放しでしかも本気で褒めているので、怒りに行き場がなくなって、ただもう拗ねるしかないのだ。
「そういや、なんでさっきから椅子に座ってんだ? やっぱ総刺繍じゃ重いか?」
「……っ!!」
「え?」
今度こそ、鶴姫が激昂したことがわかって、元親があとじさる。まなじりを吊り上げ、真っ赤になって、花嫁は叫んだ。
「誰のせいで立てないんだと思ってるんですか―――っ!!」
「やーっ、下ろして下ろして下ろしてください――っ」
「しーっ、バレやしねえよ、いいこにしてな」
ドカドカと、大広間に向かう元親の本日の扮装は、小袖に袴、昨日に比べるとずいぶん気楽だが、何かと丸出しな平生を考えれば相当にかしこまった拵えだ。
それが異様なのは、両腕に軽がると色打ち掛けの花嫁を抱いているためで、加えてその花嫁がじたばた暴れては元親の肩をばしばし叩いているからだった。
「だあってお前、ろくに腰が立たねんだからしょーがないだろ」
「だ、誰の」
「はいはい俺のせい俺のせいっと」
「うううっ、悪いですひどい旦那さまです」
「はっは、今さら遅ェや、逃がさねえから諦めなァ!」
まるっきり人さらいの台詞だが、こういうノリは彼の好みで、それはもう晴れ晴れ生き生きとしたものである。
「何歩なら歩ける?」
「五歩……です」
「う……そ、そうか」
恥ずかしそうに囁かれて、やっと元親は己の所業を悔いる気になった。
二度目の交接は、幸せなことに鶴姫に苦痛があまりなく、昼まで二人は夢中で過ごした。というか、元親が離さなかった。頑健さが売りの元親の腰にも、さすがに疲労がとぐろを巻いている。華奢な鶴姫にはまったく無体を強いてしまった。
「中まで抱いていこうか?」
「いやです!」
「うーむ」
「だって、子どもみたいで恥ずかしいです」
「う、うーむ」
そうは見られない、絶対に。
赤らんだ頬の理由は、どうも見当違いだが、元親に説明する勇気はなかった。
さて、一同の待つ大広間の前で、元親はうやうやしく鶴姫を下ろした。
「大丈夫か?」
耳元で囁けば、こくりと頷く。かさばる衣装に包まれると、なおのこと首筋の華奢さが引き立って、元親はつい吸い寄せられそうになるが、ここは我慢だ。きちんと立ったのを確認してから、向き直ってふすまを開け放った。
「待たせたな野郎ども!」
「おめでとうございますアニキ―――!!」
洋上か、と錯覚するほどの大歓声が応えたが、もちろんすべての郎党が揃ったわけではない。長曾我部水軍においてそれぞれに船を任された者、すなわち主だった将ばかりである。それでも相当な人数が、広間の奥までずらりと座っている。
そして元親の後ろに、華やかな色打ち掛けの鶴姫が続くと、非常に正直などよめきが起こった。
「うわあ、別嬪さんだ――――!」
「鶴姫ちゃ―――ん、うおおお!!」
笑って元親も怒号を上げる。
「コラてめえら、俺にはなんかないのか!」
「かっこいいですアニキ!」
「イケてますアニキ!」
「とってつけてんじゃねえよ、調子いい奴らだなあ!」
どっと座が笑い声で沸き立つ。
その間に鶴姫も歩み出て、正面を向くため、打ち掛けの裾をさばき、くるりと回った。総刺繍の打ち掛けはかなりの重量なので、しとやかに見せながら鮮やかにさばくのはなかなか難渋する。
そのとき、
「あ」
かくん、と鶴姫の膝が崩れた。
「……ッ」
それでもなんとか踏張って立て直し、しりもちを突かなかったのは根性のなせる技である。懸命に、しかしゆっくり腰を下ろした鶴姫は、背筋を伸ばしてから、さっと前に並ぶ郎党たちのようすを窺った。すると、皆が皆、元親の方を見てさんざに叫んでおり、鶴姫を注視する者はいない。
ほっと息をついた鶴姫だったが、その実、元親と野郎どもは心を合わせて声にならない会話を交わしていた。互いに言うだろうことも言われるだろうこともわかっているとそうなる。
『あーあー、アニキ、まったくもう』
『鶴姫ちゃんがかわいそうですぜ、アニキ』
『アニキ~、いくらなんでもちょっとばかり』
『うーるせ――!!』
行儀は悪いが礼儀は心得ている、長曾我部軍ならではの現象であった。
さて、ともかくも、二人が着座したのを合図に、郎党たちは平伏し、それでやっと場が静まった。
筆頭家老が、一同を代表して祝賀を述べる。
「この度は、元親様と鶴姫様のご婚儀のつつがなく執り行われた由、誠におめでとうござりまする」
年の行った郎党のなかには、いろいろと想起することがあるのだろう、目を潤ませている者も多い。戦乱を挟んで、長曾我部家はもちろん、土佐を含む四国は大きな嵐に対峙してきた。
「これにて、長曾我部家もますますのご安泰!―――――祝着至極に存じ奉ります」
「祝着至極に存じ奉ります!!」
一同が声を合わせて平伏し、あとは叫ぶような祝福の声が次々に湧き立った。
それらを受けて、元親が立ち上がる。船にいるのと変わらない不敵な面構えで声を張った。
「おう、ありがとうよ、野郎ども!」
「アニキ―――――!!」
「鶴姫ちゃ―――――ん!!!」
鶴姫はたもとで口元を隠して笑っている。ひらひらと小さく手を振ったので、郎党たちは勢いづき、なんと『鶴姫ちゃん』を呼ぶ声が『アニキ』を呼ぶそれを上回った。
元親は鶴姫とちらりと目を合わせて破顔する。そして郎党たちを見返って、がばっと小袖の片肌を脱いだ。
「うっしゃア、宴だ野郎ども! 飲むぞおお―――――!!」
「おおお――――!!」
海の男の胴間声が、長曾我部の屋敷を揺るがして響き渡った。
[newpage]
歌うわ踊るわ泣くわ笑うわ、どんちゃんドンチャン、夕方から始まった酒宴は、月が昇って、まさにたけなわ。
元親は酔ってはいるが、乱れはしない。次から次へ、郎党と杯を交わし話しこみ、ふと立ってまた別の話の輪へ入る。だが、さすがに高揚していて、郎党たちと声高にやりとりした挙句、こう叫んた。
「いいか野郎ども! 鶴は晴れて俺の女だ! お前ら馴々しく“鶴姫ちゃん”とかゆってんじゃねえ!!」
鶴姫は含んでいた白湯を噴きかけた。
「ちょ、ちょっと何を」
「姫」
さすがに咎めようとしたとき、ふすまの向こうから呼ばれて振り替える。細く空いた隙間越しに、大好きな美しい眼差しを認め、鶴姫は立ち上がった。
「奥方さま!」
「お方さま!」
「ウチのがらじゃねえ!」
「鶴姫さま!」
「いまいち!」
「いっそ、アネキ!」
「姐さん!」
「鶴姐さん!」
「鶴に似合わねえだろうが!」
「注文多いっス、アニキ!」
「馬鹿野郎、知恵がたりねんだよ!」
元親たちはまだ騒いでいる。
「足腰は大丈夫なのか?」
「うっ……はい、もうだいぶ」
縁側に座った妖艶な柳身が、鶴姫に笑いかけた。
雑賀衆は、あくまで鶴姫の護身役として同行しており、今宵の“御披露目の儀”を見届ければ、すぐに徳川の地へ出立する。
「いまさらだが……後悔はないのか?」
隣に腰を下ろすと、悪戯っぽい目で尋ねかけた。
「後悔って」
「元親は気持ちのよい男だが、ああだ。たぶん一生あのままだぞ」
あのまま―――――。どの何を指すのか、わかるようなわからぬような。
しかし鶴姫は笑った。
「大丈夫です! 私がついていますから、ドーンとお任せです☆」
まさにドーンと胸を叩いて力強く請け合う、色打ち掛けの花嫁。
「そうか、姫は頼もしいな。元親は幸せ者だ」
孫市は美しい目元を和ませて、鶴姫の頭を撫でた。えへっと照れながら笑って、鶴姫もその手のひらに頭をゆだねる。
「……姫は、幸せか?」
ためらいがちに発せられた問いかけには、鶴姫の答えはなかった。
「幸せに決まってんだろ!」
野太い声が割って入ったからである。
「元親!」
「海賊さん!」
「おうよ」
二人が見上げると、とうとう諸肌脱ぎになった男が、のっそりと立っていた。
「いねえと思ったらお前、鶴をさらったなあ?」
この『お前』は孫市を指している。
「お前も、俺という者があらながら、他の奴に擦り寄ってんじゃねえよ」
この『お前』は鶴姫だ。
「出たなカラスめ」
「な、何を言ってるんですか!」
異口同音の呆れ声にも頓着せず、元親はぺたりと腰を下ろすと、その巨躯を細身二人の間に割りこませようとする。
「やーっ、何するんですかあっ!」
「くっつきすぎなんだよ!」
「このカラスはまったく」
非難ごうごうにもくじけずに、ぐいぐいと頭を突っ込み、無理やり肩を入れてくる。
「ねえさま、ねえさまーっ」
「うるせえ観念しやがれ」
「まるっきり悪役だな元親」
孫市の、もはやしみじみとさえした声にも、元親はめげない。うるせーうるせーとヤケッパチのようにわめいて頭を振りたて、太い腕をねじ込み、しゃにむに女二人を左右に分けようとする。酒臭い。だいぶ呑んでいる。
「鶴の字ぃ、まさかお前、俺よりサヤカがいいとか言わねえよなあ」
「きゃあ!」
軽い鶴姫が廊下を滑って隙間があき、そこに元親がすかさず座り込んだ。
「い、今ならねえさまの方がいいって、はっきり思います!」
「ひでえ! この浮気もん!」
「きゃああ、いやーっ、離してぇ!」
元親は軽々と鶴姫を抱き上げ、膝に載せた。鶴姫はじたばたしているが、元親に完全に押さえこまれてはそれも無益だ。
「鶴の字ぃ」
「お酒臭いのイヤ!」
にゅうと近づいた口元を、鶴姫は遠慮なくベン!とはたいた。
「イッテ、このやろッ」
「うええん、ねえさま助けてぇ」
「クソッ、だからっ、サヤカに頼るなつってんだ――!」
大きな利かん気の童のようだ。しかもこの童は相当にやきもち焼きで面倒くさい。孫市は嘆息して夜空を見上げた。月が明るい。
「元親、あんまり締めあげるな、姫のミが出たらどうする」
「ぎゅう」
「あっ、すまねえ大丈夫かっ!」
くったりしてしまった鶴姫に元親は大慌てだ。酔っ払って、若干加減が利かなくなっている。
「カラスめ、姫は鳥だぞ」
「わかってら」
「愛でるのは良いが、縛りつけるな。飛べない鳥はじきに死ぬ」
「けっ、俺に自由を説く気かよ、しゃらくせえや」
ぎろりと睨み下ろす隻眼はしかし、奥で笑っていた。
「まったく、どいつもこいつも、俺に説教くれやがって」
そんなに危なっかしいかよ、この西海の鬼がよう、とぼやいて見せる。いま一度嘆息し、孫市は立ち上がった。
「元親、お前はまだ呑むのか?」
「あン? そーだなあ、まだ話してねえ野郎がいるからなあ」
元親が背後のふすまを見返って言う間に、鶴姫はその膝からするりと逃れた。
「あっ、てめ」
魔の手を振り切って、鶴姫は廊下に正座した。
「お?」
意表を突かれた元親が攻めあぐむ間に、さっと三つ指を突く。
「殿」
「ぐは」
元親がぐらりとかしいだ。鶴姫は、昨夜から今晩の間に入れ知恵を受けたらしい。
「だ、だからそういうのかゆいからやめろって……!」
本当にかゆみを感じるのか、元親は背中を掻きながら顔の前で手を振っている。
「お部屋でお待ちしております」
その手がぴたりと止まった。顔をあげた鶴姫が、見開いた隻眼と目を合わせたとたん頬を赤らめると、一転、上機嫌となる。
「おお、おうよ、いいこにしてな! 今夜も可愛がってやるぜ!」
「ななな何言いだすんですかおっきな声でもお!」
「ハッハッ」
「カラスめ」
呆れ返った声に、振り向いた元親がふと、不思議そうに尋ねた。
「そういやサヤカ、今日は殴らねえのな」
カラスカラスとこれだけ罵られたら、たいてい一発やニ発殴られていたものだ。すると孫市は、眉をしかめ、ちらりと鶴姫を見やってから深いため息をついた。
「どうしようもないカラスだ」
「なんでだよ!」
「奥方の前でその良人を殴れると思うのか?」
言った途端に、元親と鶴姫がぴしりと固まった。
「あ、そ……」
「ま、孫市ねえさまったら……」
そして双方、首まで真っ赤に染めあがる。
「えっと、あー、じゃっ、俺アッチ戻るわ!」
元親が飛び上がるように立ち、大慌てでふすまを引き開けて駆け入る。
「あっ、サヤカ!」
かと思うと、再び顔を出して叫ぶ。
「鶴を頼むな! 部屋まで」
「無論だ、送り届ける」
「わりィ、じゃあな鶴の字!」
返事も待たず、顔は素早く引っ込んだ。後は、再び静寂の戻った廊下に女二人だ。
「いったい、何をしに来たんだ、あのカラスは……」
「うふっ」
呆気にとられた孫市の顔など、そうそう見られるものではない。鶴姫はたもとを口元にやってころころと笑い、それからぽつりと呟いた。
「でも私……あのひとのああいうところも……実は割と好きです」
「そうか」
可愛らしい真情の吐露にはかなわない。孫市もわずかに笑み、肩をすくめる。
「それはよかった。あいつのおおかたは、『ああいうところ』でできている」
「まあ、うふっ」
「ところで……さっきから不思議なんだが、姫は奴をなんと呼んでいる?」
「えっと……海賊さんって……」
「まだそれなのか」
いやはやカラス同士、お似合いだな、とはさすがに飲み込んで、孫市は鶴姫に笑いかけた。
「では、行くか。だが姫、今夜、奴は酔い潰れて戻らないかもしれないぞ」
「はい」
釘を刺された鶴姫は、しかしあっさり頷いて笑う。
「それならそれで、ゆっくり眠れるからいいのです」
元親が聞けば、冷たい冷たいと大騒ぎのところだ。
「ね、孫市ねえさま、もう少しお話してくださいな」
「そうだな」
「明日帰ってしまわれるのでしょう?」
「ああ」
立ち上がって歩きだしたものの、まだおぼつかない鶴姫の足元に気を配りつつ、孫市も頷いた。
雲がいく筋かかかったが、月はまだ高く、夜空は明るい。
ところが一応、元親は深夜、部屋まで辿りついたのである。べろんべろんでもはや正体もなく、ふすまを開けたところで力尽き、そのままどうと倒れこんだ。
次の間で眠っていた鶴姫は轟音に飛び起き、おそるおそる覗いて苦笑した。
寝言で鶴つる言っているのが可笑しく可愛らしく、鶴姫は重い体を引っ張ったりひっくり返したりの大健闘。袴だけ辛うじて解いてやり、頭の下に枕を入れ、小袖をかぶせ、一息をつく。
しばし考えた挙げ句、夜具のある間へは戻らず、自分の上掛けだけ取ってきて、元親の太い腕を枕に目を閉じた。
次の朝、また同じ憂き目をみるのかどうか、それはわからないが、鶴姫はやはりこの良人が好ましかった。
「鶴ぅ~……」
「はあい」
「鶴ぅ」
「はい、居ますよう」
「そっか」
寝言に返事しながら、そうしていると胸底が暖まる。そして、ふと、先ほど答え損ねた孫市の問いが脳裏によみがえる。
『幸せか?』
「幸せです」
くすくすと笑いながら、一人ごちた。まだ元親は隣で何やらぶつぶつ言っている。
そんな夜だった。それが、元親と鶴姫の、婚儀の夜だった。
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