ちか　と　つる

主人公の心の中をコックピットに見立て、高校生の男女の恋模様を描いた某携帯会社のＣＭをご存知でしょうか。
そのＣＭの主人公が男の子バージョンのやつがですね、私にはチカツルに見えるわけですよ。見えちゃって仕方がないわけです。
というわけで、スーパー変換ターイム！

※学園パロ
≪　ド○モＣＭパロ　≫　しずくいし

　学校からの帰り道、他愛もない話をしながら並んで歩く元親と鶴姫。
平静を装いつつ、元親はしきりに鶴姫の様子を気にしている。
蜂蜜色の瞳は穏やかに光を放ち、珊瑚色の唇は柔らかく弧を描いている。異常なし。ミッションを遂行するには今しかない。
彼女が住む住宅街へと続く橋を半分ほど渡ったところで元親は意を決し、ポケットの中の携帯を握り締めた。
「……あのよぉ」
「はい？」
「一緒に撮らねぇ？」
先日買ったばかりの真新しい携帯を掲げ、祈るような気持ちで返事を待つ。
些か唐突な提案に虚を突かれたようではあったが、鶴姫はやがてそれに笑って応えた。
「いいですよ」

――――いよっしゃあ！！

心の中、ガッツポーズ。
鶴姫の目線に合わせた撮影範囲に収まる為、高い背を屈めて顔を寄せ合う。
甘く香る髪の匂いに陶然としかけるが、不自然に間が空いては不審がられてしまう。緩みそうな顔を慌てて引き締めシャッターを切ると、見せて下さいと鶴姫の手が携帯に伸びた。
白く小さな掌に乗った黒い液晶の中で、眩しい笑顔を浮かべた彼女とぎこちない笑みを貼り付けた自分が並んで映っている。
それを覗き込む二人は、自然と寄り添うように立っていて。

――――あれ、なんかこれ、いい雰囲気じゃね？

風に靡く鶴姫の髪が、ふわふわと元親の頬をくすぐる。
ほんの数センチ、互いの呼吸が今にも触れ合いそうな距離に、焦がれて止まない彼女の顔。
「ふふ、なんか不良さんの表情、すごく硬いですね」
撮り直しますか？と見上げられて、目と目がぶつかった。そのまましばし見つめ合う。
その瞳が潤んでいるように見えるのは、気のせいだろうか。
その頬が赤く染まっているように見える、のは。



元親は何かに導かれるように、そっと唇を寄せ――――



そして思い切りビンタされ、不本意ながら地面と熱い口づけを交わした。
どうやら気のせいだったようだ。



◆後記◆
ちなみにこのＣＭにはロングバージョンとショートバージョンがあって、よく見かけるのはショートバージョンの方。これだとあまりチカツルという感じはしないのですが、この前たまたまロングバージョンの方を見て、「これだ！」と思った次第であります。
違いは、ちゅーしようとしてビンタされるシーンがあるかないか（笑）
ド○モのサイトでＣＭ見れるんで、見たことない方は行ってみてください～（＾＾）
…あ、わたくし携帯会社とは何の関係もありませんので、回し者ではないですよ；

[3回]