ちか と つる
「おおだま」と「しずくいし」による、『戦国BASARA』のチカツルについてあれこれ語ったり、二次創作したりするブログです。NLオンリー。腐はどこを探してもありません。
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◆文責=おおだま◆
witterで深夜に一気に流したもののログです。
どどどと書き殴りながら出したので、めためたですが、思い出に。
1★
鶴姫が境内の掃除をしながらちょっとやけっぱちで鼻歌うたってる。
「伊予の鶴は~ちょっとぶきっちょ~今日は線香巻十二束調製~」
線香巻って、線香を七本で花型に束ねて細く切った半紙で巻いたやつ。線香折れるからぶきっちょさんには辛い。
2★
鶴ちゃんあんまり得意じゃなくて失敗しまくった直後。私ったら一日で十二束ですか!みたいな。まあなんでもいい。破魔矢でもお守りでも。
「ほう、もう一度歌ってみよ」
そうしたら、鳥居の外をたまたま遠来の殿様が通りかかって言う。
3★
鶴ちゃん声も可愛いから、歌ってたらよく聞きたいよね。しかし内容がぶきっちょ暴露なので恥ずかしくなった鶴ちゃんは盛って歌っちゃった。
「伊予の鶴は~はたらきもの~今日は線香巻十二箱調製~」
いやまて一箱十二束入りよ、144束は盛り過ぎよ。
4★
「ほう、それは素晴らしい」
海の向こうの大社を支配する殿さまだったので、鶴ちゃんさらわれて、幽閉される。十日夜分の水や食料を置いて、
「毎日十二箱、十日で百二十箱を調製せよ。さすれば故郷へ帰してやろう」
しかしできなければ
「命はない」
5★
鶴ちゃん呆然として、でも頑張らないと殺されるってんで、健気に作業始めるけど、ぶきっちょだから線香ぽきぽき折れる。無理ですーっと半泣きになったところに声がかかる。
「おう、小娘がこんなとこで何べそかいてんでえ」
6★
見れば、なにやら小鬼が威張ってる。鶴ちゃんがかくかくしかじか説明すると、小鬼はバーンと胸を叩いて
「なんだそんなことかい、よっしゃこの俺に任せとけ」
「本当ですか」
「おうよ、けどなあ」
7★
「十日の間に俺の名前を当てるんだ。あたりゃああんたの勝ち、おうちに帰んな」
「当たられなかったら?」
小鬼はぶわっと一瞬、天井に背が届くくらい大きくなる。
「あんたを俺の嫁にする」
隻眼をすがめて笑う。怖い。
8★
線香巻十二箱、夕食前に届けにくるから、そのとき訊ねるという。鶴姫は一日に三つ名前を試せる。
「じゃあまた夜にな!」
可愛い姿に戻った小鬼が、線香と半紙の束を抱えてぴゅるっと消える。
「まあ、十日もあれば当たるでしょー」
鶴ちゃんのんき。
9★
約束どおり、夕飯前に戻ってきた小鬼は、見事に仕上がった線香巻十二箱をドーンともってきて、
「さあ、鬼の名を言ってみな!」
とそっくりかえる。
「小太郎!」
「ブー」
「孫市!」
「ブー」
「元就!」
「ブー! はっは、はずれだ、ま、頑張って考えな!」
10★
そんな会話が毎晩続く。あんまり知りあいのいない鶴ちゃん、名前のネタもつきてきた。殿さまの使いが毎晩、線香巻を夕食後に確認しては持ってゆく。そっちの心配はなくなったが、七日八日と過ぎてゆくうちに鶴ちゃんだんだん怖くなってきた。
11★
「明日が十日目、試せる名前はあと三つだ。それがはずれりゃここを出ても故郷にゃ帰れねえ、あんたが一生暮らすのは俺の海だぜ、覚悟はいいかい?」
小鬼が言って消えたところに、殿さまの使いがくる。
12★
見事に九夜、線香巻を納めたので、感心した殿さまが夕食をともにするんだそうな。
「良い働きぶりだ。褒めてやろうぞ」
殿さまは変わらず氷の面で上から目線だが、家来が言うにはかなりご機嫌だそうだ。
「そう言えば今日は妙なものを見た」
13★
「社より海辺を行くと、小さい鬼どもが蟻のようにたかっておったのだ。真ん中には鬼瓦を載せた蜘蛛のごときものが、ぶんぶん音を立てて線香を次々にぶったぎり、小鬼どもが目にもとまらぬ速さで紙で巻いておった。その頭領らしきひときわ見苦しい小鬼が」
14★
「こう叫んだ。『野郎ども、鬼の名を言ってみろ!』すると小鬼どもが呼応する、『モ・ト・チ・カ、うおおお!!』 するとまた暑苦しい鬼の頭が『鬼ヶ島に鬼てぇのはこの俺よ、長曾我部元親よ!』と嬉しげに叫んでな。いかにも滑稽であったことだ」
15★
滑稽と言いながら殿さまの顔は気もち悪そうに歪んでいたが、鶴ちゃんは嬉しくて安心のあまり天にも舞いあがりそうで、うふふーと笑う。たいへん和やかな会食であった。鶴ちゃんはひさしぶりにぐっすり寝る。そして翌日の夕方、意気揚々と小鬼が現れた。
16★
「俺の名を言ってみな!」
「太郎かしら」
「はずれ! なんだかいきなりやる気がねえな。あと二回だぜ、大丈夫か?」
「次郎かしら」
「はずれ! さあ、いよいよ最後、これであんたは俺のもんだ!」
ぐうっと小鬼が膨れ上がり、銀髪を逆立てた隻眼の大男が現れる。
17★
掌が鶴姫に伸びたが、鶴ちゃん慌てず騒がず息を吸って静かに言う。
「あなたの名前は」
「俺の名は?」
「元親、長曾我部元親!」
愕然とした大男はよろよろと一歩下がり、ぐっと睨んだが体はしゅうっと縮んでゆく。
「ちくしょう鶴の字ぃ、覚えてやがれぇ!」
18★
鶴ちゃんはにっこり笑って、帰る準備。百二十箱めがそろったからね。殿さまは約束どおり、鶴ちゃんを社に帰してくれました。でも鶴ちゃんは困っています。社に帰っても、ずっと鬼がまわりをうろちょろしているから。
19★
「なんですかっ、鬼さんは負けたんだから帰ってください!」
「いーじゃねえかケチケチすんない。今度は破魔矢百本作ってやろうか」
「けっこーです!」
「じゃあお守り百こ」
「間に合ってます!」
鬼の諦めが早いか、巫女の根負けが早いか。
どっとはらい。