ちか と つる
「おおだま」と「しずくいし」による、『戦国BASARA』のチカツルについてあれこれ語ったり、二次創作したりするブログです。NLオンリー。腐はどこを探してもありません。
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次の停車駅を告げるアナウンスが車内に流れ、窓の外の景色が徐々に鮮明になっていく。
軋む車輪が耳障りな音を立て、目の前の小さな身体が大きく傾ぐのを元親は咄嗟に腕を取って支えた。
午前7時40分――――いわゆる朝のラッシュアワーである。
ただでさえ混む時間帯な上に、三つの鉄道路線が乗り入れているこの駅では、人の乗り降りの流れが特に激しくなる。降りる人の波に体ごと持っていかれそうになるのを吊り革に掴まってなんとかやり過ごせば、今度は乗り込んできた人の波に押され、彼らは反対側の扉の隅へと追いやられた。
焦燥感を煽る発車ベルが鳴り、駆け込み乗車はお止め下さいと叫ぶ駅員の声がホームに響く。
そしてどう考えても許容限度を超えているとしか思えない人数を無理矢理呑み込んで、電車は再び動き出した。
人いきれで上昇する温度と湿度。酸素が薄い。
長身で人より頭一つ飛び出ている元親はいくらかマシだったが、小柄な鶴姫にとってはかなりキツい状況だろう。
扉と己の身体の間にちんまりと収まっている鶴姫を見下ろすと、綺麗な曲線を描く睫毛が目に入った。
――――長ぇなー。
感心して眺めていると、視線を感じたのか鶴姫が顔を上げる。
車内の熱気で紅潮した頬と潤んだ瞳に別のものを見て、元親は急激に心音が速くなるのを感じた。
これだけの人数がいながら、車内は殊の外静かだ。喋る余裕もないと言った方が正しいか。聞こえてくるのは電車の走行音と、誰かのイヤホンから漏れる遠い音楽だけ。
自然、意識はただ一人へと集中していく。
「……大丈夫か?」
「はい、なんとか…」
至近距離で密やかに交わされる会話は、まるで睦言のよう。近付きたくて心持ち背を屈める。
カーブに差し掛かった電車が大きく左に傾いたのは、その時だった。
腕を扉に突いて鶴姫に体重が掛かるのは回避したが、どうしても身体は密着する。控えめながらも柔らかな弾力を返す感触に、腹の辺りが大変幸せなことになっていて、元親は鼻の下を伸ばした。
が、それもひと時の楽園。
電車が平衡を取り戻せば、触れそうで触れない微妙な隙間が元親を阻む。
――――カーブ、もいっちょ来い!
奇妙な静寂の中、ガタンゴトンと足裏に響く振動を感じながら、元親は心の中熱心に願った。
軋む車輪が耳障りな音を立て、目の前の小さな身体が大きく傾ぐのを元親は咄嗟に腕を取って支えた。
午前7時40分――――いわゆる朝のラッシュアワーである。
ただでさえ混む時間帯な上に、三つの鉄道路線が乗り入れているこの駅では、人の乗り降りの流れが特に激しくなる。降りる人の波に体ごと持っていかれそうになるのを吊り革に掴まってなんとかやり過ごせば、今度は乗り込んできた人の波に押され、彼らは反対側の扉の隅へと追いやられた。
焦燥感を煽る発車ベルが鳴り、駆け込み乗車はお止め下さいと叫ぶ駅員の声がホームに響く。
そしてどう考えても許容限度を超えているとしか思えない人数を無理矢理呑み込んで、電車は再び動き出した。
人いきれで上昇する温度と湿度。酸素が薄い。
長身で人より頭一つ飛び出ている元親はいくらかマシだったが、小柄な鶴姫にとってはかなりキツい状況だろう。
扉と己の身体の間にちんまりと収まっている鶴姫を見下ろすと、綺麗な曲線を描く睫毛が目に入った。
――――長ぇなー。
感心して眺めていると、視線を感じたのか鶴姫が顔を上げる。
車内の熱気で紅潮した頬と潤んだ瞳に別のものを見て、元親は急激に心音が速くなるのを感じた。
これだけの人数がいながら、車内は殊の外静かだ。喋る余裕もないと言った方が正しいか。聞こえてくるのは電車の走行音と、誰かのイヤホンから漏れる遠い音楽だけ。
自然、意識はただ一人へと集中していく。
「……大丈夫か?」
「はい、なんとか…」
至近距離で密やかに交わされる会話は、まるで睦言のよう。近付きたくて心持ち背を屈める。
カーブに差し掛かった電車が大きく左に傾いたのは、その時だった。
腕を扉に突いて鶴姫に体重が掛かるのは回避したが、どうしても身体は密着する。控えめながらも柔らかな弾力を返す感触に、腹の辺りが大変幸せなことになっていて、元親は鼻の下を伸ばした。
が、それもひと時の楽園。
電車が平衡を取り戻せば、触れそうで触れない微妙な隙間が元親を阻む。
――――カーブ、もいっちょ来い!
奇妙な静寂の中、ガタンゴトンと足裏に響く振動を感じながら、元親は心の中熱心に願った。
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