ちか と つる
「おおだま」と「しずくいし」による、『戦国BASARA』のチカツルについてあれこれ語ったり、二次創作したりするブログです。NLオンリー。腐はどこを探してもありません。
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学パロのチカツルで、「はがゆい君たちへの七題2」の7番目のお題です。
微エロを目指しました(*ノノ)
配布元:サキサカユキジ様/jachin
≪ 7.とってもうれしい、とってもくるしい ≫ しずくいし
微エロを目指しました(*ノノ)
配布元:サキサカユキジ様/jachin
≪ 7.とってもうれしい、とってもくるしい ≫ しずくいし
定例の保健委員会を終え、鶴姫が教室を出たのは太陽が西へ大分傾いた頃だった。
廊下を歩きながら眺める窓の外の街並みは黒く塗り潰され、その向こうに燃えるような橙が空を覆っている。横に幾重にも走る電線は五線譜のようで、線と線の間に上手い具合に収まった夕日に、なんとなく良いものを見た気になった。
しかしその輪郭を崩して空にべったりと溶け出す様は、音符というよりは箸を入れた半熟卵を思わせる。途端に主張し出したお腹に手をやって、鶴姫は角を曲がった。
そこではたりと足を止める。
下駄箱へと続く廊下は明かりが点いておらず、真っ暗とまではいかないけれど、薄闇に沈む空間には何かが潜んでいそうな印象を受けた。電気のスイッチはどこだったろうか。見回してみても見つからない。
ただ、人通りはゼロではなく、疎らに生徒の声がする。それに勇気付けられて、鶴姫は再び足を動かした。
ひたひたと進む暗い廊下。時折靴裏がきゅっと鳴る。そうして下駄箱の手前まで来たところでバタバタと走る足音が突然響いて、鶴姫は息を呑んだ。たった今歩いてきたのと同じ方向からだ。
緊張の面持ちで振り返ると、大きな影が近付いてくるのが分かる。
「おーい、鶴の字ぃ!」
次いで、まだ実像を結ばないそれから発せられた声は、よく聞き知ったものだった。そもそもその呼び方をする者は一人しかいない。
鶴姫は安堵の息を吐いて、頬を膨らませた。
「なんだ、元親さんですか……脅かさないで下さい!」
「なんだとはなんでえ、愛しのダーリンに向かってよう」
「ダッ…!?誰がですか!」
こっ恥ずかしい単語に、思わず否定の言葉が口を衝く。しかし元親の言うことは、あながち間違いでもなかった。
というのも、二人の関係は一ヶ月前に“喧嘩友達”から“恋人”へと昇格していたからだ。
周りにしてみれば、じれったくなるような長い長いこう着状態を経てのことだった。
「俺以外に誰がいんだよ、いたら怒るぞ」
そう返されて、二の句が継げずに押し黙る。顔が熱い。赤くなった頬を見られずに済むから、電気が点いてなくて良かったと思った。
元親はこういうことを存外普通に言ってのける。冗談かと思いきや、意外と本気だったりするので尚のこと性質が悪い。嬉しい反面、自分ばかりが振り回されているようで悔しくもある鶴姫だった。
照れ隠しから簀の子の上を早足で歩き、元親に背を向けたまま内履きを仕舞う。
先ほどまでちらほらと感じられた他の生徒の気配は、いつの間にかなくなっていた。
「コラ鶴の字、なんとか言え」
「………」
「つ~る~の~じ~」
「も、もう!なんです…んぅっ!?」
ようやく返事をしたところでいきなり唇を塞がれ、鶴姫はよろけて下駄箱へと背をつけた。手にしたローファーが転がる。何が何だか分からないうちに両肩をがっちりと押さえ付けられ、覆い被さってきた影はより深くその角度を変えた。
「んっ、やぁっ…!」
厚い胸板に手を突いて必死に抵抗を試みるも、二人の体格差はあまりに顕著だ。どうにもできないまま上唇と下唇を交互に何度も啄ばまれ、舌でねっとりとなぞられて、鶴姫は夢中で言葉を紡いだ。
「ほ、かに好き…な人…んン…なんか、いませんったらぁ!」
「うん」
あっさり頷かれて拍子抜けする。どうやら誤解しているわけではなさそうだ。
では何故?と考えてみるも、皆目検討もつかなかった。
これまで、キスは何度かしたことがある。しかしいずれも優しく重ね合わせるだけのもので、こんな風に生々しいキスは初めてだった。
混乱する鶴姫に追い討ちをかけるかのように、元親の舌が歯列を割って口腔へ入り込んでくる。戸惑いに逃げる舌はあっという間に絡め取られ、ぴちゃぴちゃと羞恥心を煽る水音を立てた。
「鶴……鶴………!」
息継ぎの合間に繰り返される、いつもと違う呼び名。
熱を帯びた声が耳元をくすぐって、神経の昂ぶりを誘う。鶴姫は堪らず吐息を零した。
鶴姫とて、好きな人と触れ合うのは嬉しい。好きだ。けれど元親に与えられるそれはあまりに唐突で激しくいとも簡単に鶴姫を呑み込んで、まるで海に溺れているようだと、朦朧とする意識の片隅で思った。
やがて肩に置かれていた大きな左手が髪を梳り、背筋を辿って、尻を一撫でする。ぴくりと身体を震わせた鶴姫に息だけで笑って、掌は太腿へと滑り降りた。
首筋に寄せられた唇に気を取られている間に、不届きな掌がスカートの裾から侵入を図る。
驚いて鶴姫が小さく声を上げたのと、静寂を打ち破る能天気な男子生徒数人の声が廊下に木霊したのは、ほぼ同時だった。
「あっ…!」
「うっわ、超暗ぇ!」
「電気どこだよ電気!」
「あった、これじゃね?」
そして薄闇に慣れた目を刺す、真白い蛍光灯の光。
明暗の落差についていけず、一時低下した視力が徐々にその機能を取り戻すに至って、自分の置かれた状況を再認識して鶴姫は目を見開いた。
学校。下駄箱。人。
見る見るうちに血の気が引いていく。
――――とんでもないです!!
慌てて目の前の肩を押すと、さすがにこの状況で続ける気はないらしく、元親はあっさりと引き下がった。
「か…帰るか」
「はい……」
ぎこちない会話を交わし、そそくさと校舎を後にする。
辺りはすっかり夕闇に包まれ、雲に僅かに色を映した残照が、辛うじて夜の訪れを堰き止めていた。
「なぁ、鶴の字」
「なんですか?」
「今からうち来ねーか?」
「え」
「それで、続きをだな……」
「行きません☆」
性懲りもなく腰に伸びてきた手をぺちりと叩き落とし、断固拒否の構えを見せる。
すると子供のように口を尖らせて拗ねる男に、鶴姫はとうとう笑い出した。
本当にしようがない――――しようがなく、そして愛しい人。
「そのうちですよ、そのうち」
「そのうちっていつだよー」
自然に絡めた手をぶんぶん振り回してにこりと笑うと、気を取り直したのか元親も笑顔を見せた。
鶴姫の好きな笑顔だ。
其処此処で街灯が灯り出す。
もうすぐ夜がやってくる。
廊下を歩きながら眺める窓の外の街並みは黒く塗り潰され、その向こうに燃えるような橙が空を覆っている。横に幾重にも走る電線は五線譜のようで、線と線の間に上手い具合に収まった夕日に、なんとなく良いものを見た気になった。
しかしその輪郭を崩して空にべったりと溶け出す様は、音符というよりは箸を入れた半熟卵を思わせる。途端に主張し出したお腹に手をやって、鶴姫は角を曲がった。
そこではたりと足を止める。
下駄箱へと続く廊下は明かりが点いておらず、真っ暗とまではいかないけれど、薄闇に沈む空間には何かが潜んでいそうな印象を受けた。電気のスイッチはどこだったろうか。見回してみても見つからない。
ただ、人通りはゼロではなく、疎らに生徒の声がする。それに勇気付けられて、鶴姫は再び足を動かした。
ひたひたと進む暗い廊下。時折靴裏がきゅっと鳴る。そうして下駄箱の手前まで来たところでバタバタと走る足音が突然響いて、鶴姫は息を呑んだ。たった今歩いてきたのと同じ方向からだ。
緊張の面持ちで振り返ると、大きな影が近付いてくるのが分かる。
「おーい、鶴の字ぃ!」
次いで、まだ実像を結ばないそれから発せられた声は、よく聞き知ったものだった。そもそもその呼び方をする者は一人しかいない。
鶴姫は安堵の息を吐いて、頬を膨らませた。
「なんだ、元親さんですか……脅かさないで下さい!」
「なんだとはなんでえ、愛しのダーリンに向かってよう」
「ダッ…!?誰がですか!」
こっ恥ずかしい単語に、思わず否定の言葉が口を衝く。しかし元親の言うことは、あながち間違いでもなかった。
というのも、二人の関係は一ヶ月前に“喧嘩友達”から“恋人”へと昇格していたからだ。
周りにしてみれば、じれったくなるような長い長いこう着状態を経てのことだった。
「俺以外に誰がいんだよ、いたら怒るぞ」
そう返されて、二の句が継げずに押し黙る。顔が熱い。赤くなった頬を見られずに済むから、電気が点いてなくて良かったと思った。
元親はこういうことを存外普通に言ってのける。冗談かと思いきや、意外と本気だったりするので尚のこと性質が悪い。嬉しい反面、自分ばかりが振り回されているようで悔しくもある鶴姫だった。
照れ隠しから簀の子の上を早足で歩き、元親に背を向けたまま内履きを仕舞う。
先ほどまでちらほらと感じられた他の生徒の気配は、いつの間にかなくなっていた。
「コラ鶴の字、なんとか言え」
「………」
「つ~る~の~じ~」
「も、もう!なんです…んぅっ!?」
ようやく返事をしたところでいきなり唇を塞がれ、鶴姫はよろけて下駄箱へと背をつけた。手にしたローファーが転がる。何が何だか分からないうちに両肩をがっちりと押さえ付けられ、覆い被さってきた影はより深くその角度を変えた。
「んっ、やぁっ…!」
厚い胸板に手を突いて必死に抵抗を試みるも、二人の体格差はあまりに顕著だ。どうにもできないまま上唇と下唇を交互に何度も啄ばまれ、舌でねっとりとなぞられて、鶴姫は夢中で言葉を紡いだ。
「ほ、かに好き…な人…んン…なんか、いませんったらぁ!」
「うん」
あっさり頷かれて拍子抜けする。どうやら誤解しているわけではなさそうだ。
では何故?と考えてみるも、皆目検討もつかなかった。
これまで、キスは何度かしたことがある。しかしいずれも優しく重ね合わせるだけのもので、こんな風に生々しいキスは初めてだった。
混乱する鶴姫に追い討ちをかけるかのように、元親の舌が歯列を割って口腔へ入り込んでくる。戸惑いに逃げる舌はあっという間に絡め取られ、ぴちゃぴちゃと羞恥心を煽る水音を立てた。
「鶴……鶴………!」
息継ぎの合間に繰り返される、いつもと違う呼び名。
熱を帯びた声が耳元をくすぐって、神経の昂ぶりを誘う。鶴姫は堪らず吐息を零した。
鶴姫とて、好きな人と触れ合うのは嬉しい。好きだ。けれど元親に与えられるそれはあまりに唐突で激しくいとも簡単に鶴姫を呑み込んで、まるで海に溺れているようだと、朦朧とする意識の片隅で思った。
やがて肩に置かれていた大きな左手が髪を梳り、背筋を辿って、尻を一撫でする。ぴくりと身体を震わせた鶴姫に息だけで笑って、掌は太腿へと滑り降りた。
首筋に寄せられた唇に気を取られている間に、不届きな掌がスカートの裾から侵入を図る。
驚いて鶴姫が小さく声を上げたのと、静寂を打ち破る能天気な男子生徒数人の声が廊下に木霊したのは、ほぼ同時だった。
「あっ…!」
「うっわ、超暗ぇ!」
「電気どこだよ電気!」
「あった、これじゃね?」
そして薄闇に慣れた目を刺す、真白い蛍光灯の光。
明暗の落差についていけず、一時低下した視力が徐々にその機能を取り戻すに至って、自分の置かれた状況を再認識して鶴姫は目を見開いた。
学校。下駄箱。人。
見る見るうちに血の気が引いていく。
――――とんでもないです!!
慌てて目の前の肩を押すと、さすがにこの状況で続ける気はないらしく、元親はあっさりと引き下がった。
「か…帰るか」
「はい……」
ぎこちない会話を交わし、そそくさと校舎を後にする。
辺りはすっかり夕闇に包まれ、雲に僅かに色を映した残照が、辛うじて夜の訪れを堰き止めていた。
「なぁ、鶴の字」
「なんですか?」
「今からうち来ねーか?」
「え」
「それで、続きをだな……」
「行きません☆」
性懲りもなく腰に伸びてきた手をぺちりと叩き落とし、断固拒否の構えを見せる。
すると子供のように口を尖らせて拗ねる男に、鶴姫はとうとう笑い出した。
本当にしようがない――――しようがなく、そして愛しい人。
「そのうちですよ、そのうち」
「そのうちっていつだよー」
自然に絡めた手をぶんぶん振り回してにこりと笑うと、気を取り直したのか元親も笑顔を見せた。
鶴姫の好きな笑顔だ。
其処此処で街灯が灯り出す。
もうすぐ夜がやってくる。
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