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ちか と つる

「おおだま」と「しずくいし」による、『戦国BASARA』のチカツルについてあれこれ語ったり、二次創作したりするブログです。NLオンリー。腐はどこを探してもありません。

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学パロのチカツルで、「はがゆい君たちへの七題2」の2番目のお題です。
とととんっと投下するつもりが、ちょっと時間空いちゃった;

ところで、ここに見に来てくださってる方々は、皆さんピクシブの方で既読の方ばかりなのかな?
ここのブログが初見って方もいらっしゃるのでしょうか…?
ちょっとした疑問です。

配布元:サキサカユキジ様/jachin

≪ 2.どうして、と訊けない ≫ しずくいし
「Damn it! 最上の野郎、身内だと思って扱き使いやがって」
 しんと静まり返った小さな部屋に、棘のある呟きが零れて消える。
 社会科資料室であるそこには様々な資料が山と置かれ、埃を纏ったそれらは音を発した傍から吸収するかのようだった。
「明日の授業で使う資料の準備くらい、テメーでやれっつの」
 それでもめげずにぶちぶちと文句を垂れる。
 最上とはこの学園の政治経済の教師であり、同時に彼の叔父に当たる。それをいいことに雑用を押し付けられることもしばしばで、親戚だからと言って仲が良いわけでもない、むしろ鬱陶しいと認識している政宗にとって、最上は目の上のたんこぶであった。
 しかし無視したらしたで後々面倒臭いので、こうして渋々従っているわけだが――――膨大なメモ書きを前に集中力の低下は顕著で、政宗はとうとう手にした紙切れをふん投げ、自身も傍らのソファへと身を投げ出した。
「やってらんねー」
 安物ゆえにあまり座り心地は良くないが、それなりに使っているのか埃は立っていない。仰向けに寝転がり脱力していると、廊下の方から足音が聞こえて、政宗は少しだけ頭を持ち上げた。二人いる。歩き方の感じからして、教師ではなさそうだ。
 もっとも、今の状態で教師が入ってきたとしても、慌てて姿勢を正すような繊細な神経を彼は持ち合わせていなかったが。
 足音はちょうどこの部屋の前で止まった。
「あの、お話ってなんでしょうか?」
 次いで聞こえた甲高い声は、聞き覚えのあるものだった。
 ここは主に特別教室や教師用の資料室が集まった階で、放課後ともなれば生徒の人通りはほとんどなくなる。そんなところで改まって“お話”となれば、そこには秘密の匂いがぷんぷん漂ってくるというものだ。
 しかもこの向こうにいる声の主は恐らく――――
 俄然興味を引かれて、政宗は足音を忍ばせ入口の方へと身を寄せた。
 ところどころ塗装の剥げた引き戸に、そっと耳を当てる。
「急にこんなこと言ったら、驚くかもしれないけど」
「はい」
「俺、君のこと好きなんだ。ずっと前から好きだった」
 状況が状況なので、口笛を吹く真似だけしてみる。
 これは面白くなりそうだ。
「ええっ、そうなのですか!?」
「付き合って……もらえないかな?」
「えーとえーと、どうしましょ。わたしあの……」
「もちろん返事は今すぐじゃなくていいんだ。考えてみてくれないかな?」
「あ、はい……」
「じゃ、また!」
 そして去っていく足音。
 それが完全に聞こえなくなったのを待って、政宗は引き戸を細く開け、隙間から顔だけ覗かせた。呆然と立ち尽くしていたのは、思った通り同級生の鶴姫だ。
「で、どーすんだ?」
「きゃあっ!?」
 声を掛けると、彼女は文字通り飛び上がった。よほど驚いたのか、こちらを振り向いた琥珀色の大きな瞳には涙が浮かんでいる。
「ま、政宗さん!聞いていたのですか!?」
「おっと、言っとくが先客はこっちだぜ。後からやって来て勝手に愛の告白おっ始めたのはあちらさんだ」
 不可抗力を訴えると、むうと黙る様子が可笑しい。
 政宗は口角を上げ、で?と促した。一瞬ハテナマークを顔に浮かべた鶴姫だったが、すぐに察したのかさっと目を伏せる。
「……わかりません……どうしましょ」
「相手のことは前から知ってんのか?」
「いえ、隣のクラスってことしか……」
「よく知らねえなら断りゃいんじゃねーの?」
「よく知りもしないのに断って良いものでしょうか?」
 なるほど、自分とは根本的に考え方が違うらしい。こりゃアイツも苦労するな、と一人の男を思い浮かべ苦笑した。
 もっとも、その実は同情よりも愉快な気持ちの方が大きかったりするのだが。
「ま、頑張れよ」
 とりあえず話を適当に切り上げ、この場を早急に立ち去ることにする。

 ――――ここで口止めなんぞされちゃ、いろいろ面白くなくなっちまうからな。

 にんまり笑ったその顔を、鶴姫は知らない。
 こうしてこの場を後にした政宗が最上の用事を失念していたことに気付くのは、家に帰った後のことであった。





 昼休みの校内は音に溢れている。
 教室から弾ける笑い声、廊下のざわめき、校庭に響く歓声。
 いつもであればそのどれかに属している鶴姫だが、今日は廊下に一人佇み、窓の外をじっと見ていた。その表情は真剣そのもので、視線は絶えず同じ人物を追っている。
 告白から二日が経ち、実のところ鶴姫は困っていた。
 交際を考えてみてくれと言われたものの、考える為の判断材料が何もないのだ。その相手のことを、自分はまったくと言っていいほど知らない。
 一応、情報収集は試みてみた。
 孫市に頼んでどういう人となりなのかを調べてもらい、『サッカー部に所属しており、仲間からの人望も厚く、非常に爽やかな人物』という情報も得た。先ほどから見ていても、友人たちとサッカーに興じ楽しげに笑い合う姿は聞いたままの人物像で、そこに違和感はない。評判通りの良い人なのだろうと思う。
 けれど単純に「じゃあ」とはいかないのは、それらが鶴姫自身が実際に彼と接して得た感想ではないからだ。
 やはり会話が足りない。圧倒的に足りない。
 この状態で、彼は一体どうやって自分を好きになったのだろうと謎はむしろ深まるばかりで、鶴姫は溜息を吐いた。
「なーにやってんでぇ」
「うに」
 急に頭が上から押さえつけられ、ぐっと沈んだ。頭が動かせないので目だけで周りの様子を探ると、鮮やかな紫色の学ランが視界に入った。元親だ。
 どうやら鶴姫の頭に肘を乗せ、体重をかけている。
「重いぃぃぃ」
 じたばたともがいてもがいて、やっとのことで魔の手から脱出する。なりふり構わず動いた為に髪はボサボサで、手櫛で直しながら鶴姫は叫んだ。
「もうっ、何するんですか!」
「……別に」
 対する元親の態度は、随分と素っ気なかった。
 短く言い捨て、ふいと視線を逸らす仕種に、おやと首を傾げる。
 この手のちょっかいをかけてくる時、元親は大抵ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべている。それがどうにも馬鹿にされているようでむかっ腹が立ち、喧嘩に発展するのがいつものパターンなのだが、今日はどうも様子が違う。
 眉間に寄った皺、硬く引き結ばれた唇。険しい表情は――――そう、怒っている。
「アイツを見てたのかよ」
「え?」
「告白されたんだろ」
「ええっ、なんで知って……あ!政宗さん!?」
「大丈夫だ、心配すんな。アイツは俺にしか喋ってねえよ」
 それは大丈夫と言うんでしょうか、という心の声は、なんというか妙な迫力を醸し出す元親の前に、吐かれることなく飲み込まれた。
 気まずい沈黙が落ちる。
「で、受けんのか」
「……どうしたらいいのか分からなくて……もういっそ、一度お付き合いしてみた方が良いのでしょうか?」
 孫市には、一度付き合ってみるのも一つの手だと言われた。相手を知るにはそれが一番手っ取り早い、と。
 そういうものだろうか。
 鶴姫としては、軽く意見を聞いてみただけのつもりだった。

「~~~ッ、好きでもないのに付き合うのかよ!?」

 返ってきたのは剥き出しの怒りだった。両肩を掴まれ、声を荒げる元親の強張った顔が目前に迫る。
 周りの視線がこちらに集中するのが分かったが、鶴姫に気にしている余裕はなかった。
「あ……そ、そうですよね……相手の方に失礼ですよね……ごめんなさい」
 元親の指摘は正しい。だから素直に非を認めた。
 けれど突然の激昂には少々戸惑った。感情の波がいつになく激しい、気がする。
 分かりゃいいんだ、ともごもご呟きぎこちなく身を離す元親を、目で追う。
 掴まれた肩がじんじんと痺れた。

 ――――どうして、そんなに

「鶴姫ちゃーーん!」
 明るい声に名前を呼ばれて、鶴姫は我に返った。
 辺りを見回すと、今まさに話題に上がっている張本人が、校庭から満面の笑みで手を振っている。
 つられて笑顔を零し右手を上げたが、肩口辺りでその動きを封じられて鶴姫はぎょっと振り返った。左手首も同様に掴んだ不届きな輩は、向けられる困惑の視線も意に介さず、そのまま両手を鶴姫の頭の上に――――
「猿のポーズ」
「って、何させるんですかぁぁーーーっ!!!」
 力任せに腕を振り切り、元親に向き直る。さぞや小憎たらしい笑みを浮かべているかと思いきや、真顔で見つめられてたじろいだ。
 まただ。

 ――――どうして、そんな顔するの?

 時が止まったかのように動けない。
 息が苦しい。
 視線が熱い。

 ――――どうして、

 ぐるぐると廻る思考を遮るように、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
 ざわついていた廊下から徐々に人が消え、音が遠ざかっていく。
「おら、戻るぞ」
 先ほどまでの何かを訴えかける眼差しが嘘のように、あっさりと元親は背を向けた。
 呪縛にも似たプレッシャーからの解放にほうと安堵の溜息を吐いて、鶴姫もその後に続く。そうして一歩踏み出して、あ、と声を上げた。元親のもたらす奔流に呑まれ、すっかり失念していた存在を思い出したのだ。
 慌てて窓の外を見ると、そこにはもう手を振っていた彼の姿はなくて。
 申し訳ないと思う反面、どこかほっとしている自分に気付いて、鶴姫は動揺を隠すように前を行く広い背中に体当たりをした。

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