ちか と つる
「おおだま」と「しずくいし」による、『戦国BASARA』のチカツルについてあれこれ語ったり、二次創作したりするブログです。NLオンリー。腐はどこを探してもありません。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
その日の朝、目覚めてベッドから降りる瞬間、クラッときたのは予兆だったのかもしれません。
けれどそれも一瞬のことで、あとは特に何がどうというわけでもなかったので、わたしは普段通り登校しました。
授業中はいつもより少し眠かった気がします。数学の時に、うとうとしたところを先生から指名されてしまって、孫市姉さまに助けてもらいました。
お昼はあまりお腹が空かなかったので、幸村さんにお弁当を食べてもらいました。いつもお腹を空かせている幸村さんはとても喜んでくれて、なんだか良いことをした気分です。あっという間に食べ終わって返された空箱にはご飯粒一つ残っていなくて、わたしは目をまん丸くしてしまいました。
お昼休みは昨日買ったばかりの本を読もうと思いましたが、ちっとも頭に入ってこないので、ほとんど窓の外をぼんやり眺めて過ごしました。
そうして午後の体育の授業でグラウンドに出たまでは覚えているのです。
けれど気が付いたら、わたしはゆらゆらと波に揺られて夢心地でした。
――――いいえ、実際には波ではありません。
薄く目を開けると、最初に綺麗な銀色が見えました。頬に当たるそれは柔らかくて気持ちが良いです。
鼻先を掠めるのは、どこかで嗅いだことのある匂い。何故でしょう、なんだかドキドキします。
体ごと触れた面が温かくて、その分背中が寒くて、更なる熱を求めてわたしは目の前のそれにぎゅっとしがみつきました。するとびくりと震えて、揺れが止まります。
「………鶴の字?」
膜が張ったような曖昧な意識の向こうで、低く響く声。体を直接伝って、こころにじわりと染み込みます。
ああ、この声は――――
「もとちか、さん……」
いつもは“不良さん”と呼びます。
何故その時そう呼んだのか、自分でもよく分かりません。勝手に口から出てきたのです。
ただ、喉がひりついて上手く音にならなかったので、ちゃんと聞こえなかったかもしれません。
「……………おう。しっかり掴まってろよ」
長い長い沈黙の後に彼はぽつりとそう言って、再び心地良い波のような揺れが始まりました。
――――この人の傍は、海の気配がする。
懐かしいような、むず痒いような。
不思議な気持ちが込み上げて、わたしは逞しい肩に瞼をぎゅうと押し付けました。
けれどそれも一瞬のことで、あとは特に何がどうというわけでもなかったので、わたしは普段通り登校しました。
授業中はいつもより少し眠かった気がします。数学の時に、うとうとしたところを先生から指名されてしまって、孫市姉さまに助けてもらいました。
お昼はあまりお腹が空かなかったので、幸村さんにお弁当を食べてもらいました。いつもお腹を空かせている幸村さんはとても喜んでくれて、なんだか良いことをした気分です。あっという間に食べ終わって返された空箱にはご飯粒一つ残っていなくて、わたしは目をまん丸くしてしまいました。
お昼休みは昨日買ったばかりの本を読もうと思いましたが、ちっとも頭に入ってこないので、ほとんど窓の外をぼんやり眺めて過ごしました。
そうして午後の体育の授業でグラウンドに出たまでは覚えているのです。
けれど気が付いたら、わたしはゆらゆらと波に揺られて夢心地でした。
――――いいえ、実際には波ではありません。
薄く目を開けると、最初に綺麗な銀色が見えました。頬に当たるそれは柔らかくて気持ちが良いです。
鼻先を掠めるのは、どこかで嗅いだことのある匂い。何故でしょう、なんだかドキドキします。
体ごと触れた面が温かくて、その分背中が寒くて、更なる熱を求めてわたしは目の前のそれにぎゅっとしがみつきました。するとびくりと震えて、揺れが止まります。
「………鶴の字?」
膜が張ったような曖昧な意識の向こうで、低く響く声。体を直接伝って、こころにじわりと染み込みます。
ああ、この声は――――
「もとちか、さん……」
いつもは“不良さん”と呼びます。
何故その時そう呼んだのか、自分でもよく分かりません。勝手に口から出てきたのです。
ただ、喉がひりついて上手く音にならなかったので、ちゃんと聞こえなかったかもしれません。
「……………おう。しっかり掴まってろよ」
長い長い沈黙の後に彼はぽつりとそう言って、再び心地良い波のような揺れが始まりました。
――――この人の傍は、海の気配がする。
懐かしいような、むず痒いような。
不思議な気持ちが込み上げて、わたしは逞しい肩に瞼をぎゅうと押し付けました。
PR