ちか と つる
「おおだま」と「しずくいし」による、『戦国BASARA』のチカツルについてあれこれ語ったり、二次創作したりするブログです。NLオンリー。腐はどこを探してもありません。
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≪ 脳内占拠 ≫ しずくいし
硝煙と血の匂いが入り混じった風が髪を揺らす。それはじっとりと汗に濡れた肌を徒に撫でるばかりで、鶴姫は不快感にむっと顔を顰めた。
硝煙と血の匂いが入り混じった風が髪を揺らす。それはじっとりと汗に濡れた肌を徒に撫でるばかりで、鶴姫は不快感にむっと顔を顰めた。
本隊から一人はぐれて、どれくらいの時間が経っただろう。
遠くで聞こえる銃声は疎らで、戦いの終局が近いことだけは窺い知れる。勝利は目前だ。
しかしそれとは反対に、鶴姫の置かれた状況は絶望的だった。
見通しの悪い林の中をこちらは一人、追手は七人。先ほど左足に受けた傷が思ったより深く、痛みで満足に走ることもできない。
木陰で息を殺し身を潜めてみたものの、見つかるのは時間の問題だと分かっていた。殺気立った気配が確実にこちらへと近付いている。
ここで死ぬのかと考える。と同時に嫌だなと思った。
だってここには海がない。
日の光に照らされてキラキラと光る紺碧も、心落ち着く潮の香りも、嫌なことを吹き飛ばしてくれる強い海風もみんなみんな。
船の仲間や故郷の人々の顔が浮かんだ。その顔がたちまち暗い影を纏う。
それが何を意味するのかはまだよく分からなかったけれど、そんな顔をさせたくない、その一心で鶴姫は重い足を引き摺り、間近に迫った敵へと矢を放った。
ひょう、と音を立てて矢が空を切る。
三方向に同時に放たれた矢のうち一本は仕留めたが、二本は刀で弾かれた。その間にも別の追手が距離を詰め、次の攻撃へ移ろうとする手元を焦りで狂わせる。
無情にも明後日の方向へと消える矢、せめて間合いを取ってもう一撃。
しかし既に感覚がなくなりつつある足が言うことを聞かず、鶴姫は激しく転倒した。
見上げれば、頭上で煌く冷たい光。
それが一息に振り下ろされ――――
斬ッ
今まさに鶴姫の命を奪い取ろうとしていた敵が、突然もんどりうって倒れた。そのままピクリとも動かなくなる。
一体何が起きたのかと慌てて辺りを見回すと、視界を鮮やかな紅紫が横切った。
あの陣羽織は――――
「か…いぞく、さん…!?」
「残念だったなぁ、鶴の字!王子様はいつもなんちゃらの羽の野郎とは限らねぇのよ。今日は鬼で我慢しな!」
唐突に現れ、軽口を叩きつつ残党を薙ぎ倒していく元親を目で追いながら、鶴姫は呆然と呟いた。
「…どうして……?」
何故ここにいるのか?
何故助けてくれるのか?
次から次へと溢れ出す疑問に答えは返らず、自分を守るように立つ広い背中をただただ見つめ続ける。
やがてその場に立っているのが一人だけになると、大きく息を吐いた元親がこちらを振り返った。
圧倒的な強さを誇る戦いぶりとは裏腹に、子供じみているとも思える得意げな笑顔。
悔しいかな、その瞬間 鶴姫の頭の中は目の前の男のことでいっぱいになった。
◆後記◆
おおだまんに同じく、生まれて初めて書いたチカツル文です。初出はピクシブでした。
(→http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=80021)
鶴ちゃんの「かなしいって何ですか?わたし分かりません」というセリフをよく把握していない時に書いたので、普通に「かなしい」を理解している文になっていたのを一部修正しました。
いやー、やっぱりある程度情報入れてからじゃないとダメですね(^^;)
鶴ちゃんはこういう瞬間を積み重ねて、アニキに徐々に惹かれていけばいいと思います。
遠くで聞こえる銃声は疎らで、戦いの終局が近いことだけは窺い知れる。勝利は目前だ。
しかしそれとは反対に、鶴姫の置かれた状況は絶望的だった。
見通しの悪い林の中をこちらは一人、追手は七人。先ほど左足に受けた傷が思ったより深く、痛みで満足に走ることもできない。
木陰で息を殺し身を潜めてみたものの、見つかるのは時間の問題だと分かっていた。殺気立った気配が確実にこちらへと近付いている。
ここで死ぬのかと考える。と同時に嫌だなと思った。
だってここには海がない。
日の光に照らされてキラキラと光る紺碧も、心落ち着く潮の香りも、嫌なことを吹き飛ばしてくれる強い海風もみんなみんな。
船の仲間や故郷の人々の顔が浮かんだ。その顔がたちまち暗い影を纏う。
それが何を意味するのかはまだよく分からなかったけれど、そんな顔をさせたくない、その一心で鶴姫は重い足を引き摺り、間近に迫った敵へと矢を放った。
ひょう、と音を立てて矢が空を切る。
三方向に同時に放たれた矢のうち一本は仕留めたが、二本は刀で弾かれた。その間にも別の追手が距離を詰め、次の攻撃へ移ろうとする手元を焦りで狂わせる。
無情にも明後日の方向へと消える矢、せめて間合いを取ってもう一撃。
しかし既に感覚がなくなりつつある足が言うことを聞かず、鶴姫は激しく転倒した。
見上げれば、頭上で煌く冷たい光。
それが一息に振り下ろされ――――
斬ッ
今まさに鶴姫の命を奪い取ろうとしていた敵が、突然もんどりうって倒れた。そのままピクリとも動かなくなる。
一体何が起きたのかと慌てて辺りを見回すと、視界を鮮やかな紅紫が横切った。
あの陣羽織は――――
「か…いぞく、さん…!?」
「残念だったなぁ、鶴の字!王子様はいつもなんちゃらの羽の野郎とは限らねぇのよ。今日は鬼で我慢しな!」
唐突に現れ、軽口を叩きつつ残党を薙ぎ倒していく元親を目で追いながら、鶴姫は呆然と呟いた。
「…どうして……?」
何故ここにいるのか?
何故助けてくれるのか?
次から次へと溢れ出す疑問に答えは返らず、自分を守るように立つ広い背中をただただ見つめ続ける。
やがてその場に立っているのが一人だけになると、大きく息を吐いた元親がこちらを振り返った。
圧倒的な強さを誇る戦いぶりとは裏腹に、子供じみているとも思える得意げな笑顔。
悔しいかな、その瞬間 鶴姫の頭の中は目の前の男のことでいっぱいになった。
◆後記◆
おおだまんに同じく、生まれて初めて書いたチカツル文です。初出はピクシブでした。
(→http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=80021)
鶴ちゃんの「かなしいって何ですか?わたし分かりません」というセリフをよく把握していない時に書いたので、普通に「かなしい」を理解している文になっていたのを一部修正しました。
いやー、やっぱりある程度情報入れてからじゃないとダメですね(^^;)
鶴ちゃんはこういう瞬間を積み重ねて、アニキに徐々に惹かれていけばいいと思います。
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